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企画でメシを食っていく

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2016.04.11

「企画メシ2016」プレイベント詳細レポ!


第一部「企画メシってなに?」

「企画でメシを食っていく2016」は5/7(土)に開講!

【4/18(月)】のエントリー締切に先駆けて、去る4月3日(日)に「企画でメシを食っていく2016」(以下、「企画メシ2016」)の説明会を兼ねたプレイベントが行われました。50名近くもの方々が会場のBUKATSUDO(横浜市西区)に。熱気あふれた当日の模様をレポートします。


第一部では、「企画メシ」のモデレーター・阿部広太郎さんと、「企画メシ」を一緒に企画した木村綾子さんが、『企画メシってなに?』というテーマでトークセッションを行いました。


木村 綾子:作家、本屋B&Bスタッフ BUKATSUDOコンテンツプランナー
阿部 広太郎:「企画でメシを食っていく」主宰 コピーライター、モデレーター



ちゃんと売り物になると思いました。

阿部:はじめに「企画メシ」をはじめるきっかけについてお話ししようと思います。

木村:はい、今でもその時のこと覚えています。

阿部:すべては、2014年の年末に、僕が木村さんに送ったメールからはじまったんです。朝7時56分にいてもたってもいられずメールを送りました。

阿部:真冬の朝からこんな暑苦しいメールをお送りさせていただいて(笑)メールを受け取った時、正直どう思いました?

木村:そうですね。実際に私も参加したいと思ったし、ちゃんと売り物になると思いました。私はB&BもBUKATSUDOも、立ち上げ時から関わっているのですが、イベントや講座を企画する時、「イベントや講座は、それが開催されている時間分だけ人を拘束し、お金までいただいているのだから、対価交換ができているか、ちゃんと売り物になっているか」ということを念頭に置いているんです。その考えに当てはまる企画だと思いました。たしかすぐに阿部さんへ「打合せしましょう」とメールをお送りしたと思います。

阿部:たしかに、そうでしたね!

木村:すぐに阿部さんも予定を出してくれて、初回の打合せの際にはもう、講師の方たちはどうしようかと話しましたよね。

阿部:はい、下北沢のカフェでわくわくしていたのを覚えてます。

木村:私は、依頼を受ける側にもなるのですが、わくわくしてもらえるラブレターを書こうという気持ちで依頼状をつくりました。書きながら、心に届く自信はあったんですよね。

阿部:講師の皆さんも快くお返事くださったのは、この講座に懸ける志に共鳴していただけたからではないかと思っています。


講座・イベントの終わりが始まり。

阿部:木村さん的には、昨年「企画メシ」いかがでした?

木村:私は一番後ろで、みんなの背中を眺めていたのですが、時間が経過するにつれ、ほどけていく印象を受けました。ここBUKATSUDOでの企画は、「講座・イベントの終わりが始まりだ」と思ってもらえるような企画を立てていこうと、内沼晋太郎さん(本屋B&Bの発起人でもあり、BUKATSUDOのコンセプトを考えられた)と決めていました。一時期一緒に過ごしても、終わってしまったら、それぞれの日常に戻って会う機会も減っていく。それがほとんどだと思うんです。でも「企画メシ」のみんなは、Facebookでつながったり、みんなでプロジェクトをしていたりしますよね。これまでBUKATSUDOで何本も企画を立てているけれど、最もやりたかったことを受講生のみんなが叶えてくれたという手応えもあります。

阿部:講座が終わってもみんなが集まったりして、「何かやろうよ!」という動きがあったりもして。僕はまさしく、このような「きっかけ」をつくりたかったので本当に嬉しいです。

木村:あとは、30歳前後という受講生の年齢設定が絶妙だったなと思っています。20代の頃はあれもできます、これもできますと言えたんですけど、30代になってくると時間的にも、体力的にもできないことが増えていきます。だけど、できないことがわかると、できることの精度を高めていこうと思えるんですよ。そうすると、だんだん自分ができていく。そういう中で受講生の皆さんの様子を見ていたら、いま自分が立っている場所が間違っていないと確認することもできたんです。


自分らしさに気づくと、変われる。

阿部:ひらめきを形にすることの大切さと大変さでいうと、「企画メシ」では、ひらめきを思いつくところから、かたちにするところまでを伝えたいと思っています。僕がモデレーターでありながら、毎回課題を提出して、しかもかたちにすることにこだわるのは、「やればできるんだよ」ということが伝わるといいなと思っているんです。木村さんは、これまでの仕事を通じてどう感じられますか?

木村:私は割とやりたいことはやってこられたと思います。その一方で、自分が向いていると思ってやってきたことが、まわりから「そうではないよ」と気付かされることもありました。20代はテレビや雑誌にタレントとして出る仕事が多かったのですが、「自分を見て」という仕事は、あまり自分に向いていないと気づいたんです。雑誌やテレビに出て何が楽しかったかというと、私は学生時代から文学が好きだったので、本を紹介したりとか、「カバンの中身見せて特集」の時に、ファッション誌を読むような子は絶対に読まないだろうというような純文学の作品をわざと鞄の中に入れておいたり。ファッション目当てでファッション誌を買った人に私の好きな太宰治の作品の情報を届けるなんてことをしていました。何かと何かをつなぐ役割として、自分がそこにいるということが本当に楽しくて、「ああ、こういうことをしたかったんだ」と初めて気づきました。

阿部:気づくことで、仕事も変わってきましたか?

木村:本を紹介したり、こんなに素敵な人がいるんですよと紹介したりするようなポジションでメディアに登場している時は自分らしくいられたのですけど、「自分について語ってください」とかはどこか違うかなと。そうしたら色々と整理がついて、仕事の形も変わってきましたし、一歩下がると見える景色が私は好きなんだって思うようになりました。

阿部:実際に、木村さんは自分らしさや、自分の好きを認識するところから、今のBUKATSUDOやB&Bでの企画の仕事にもつながってきているのですね。

木村:昔から、何年後にこうなっていたいとか、肩書きが固有名詞で浮かぶということがなくて、常に「今、今、今!」だったんです。何かひらめいたら、人に伝えるようにしていました。たとえばファッション誌で連載を持たせていただいた時も、「本が好きなんです。本を紹介したいです。文章を書いてみたいです」って言い続けると、面白がってくれる人がいたんです。だから、まず言うようにしていますね。それに、今が楽しいこと、今が充実していること、すごく大切だと思っていて、肩書きは後からついてくればいいと思ってるんです。そんな風に思っていたら肩書きがよくわからなくなってしまったんですけどね(笑)

阿部:肩書きに関しては、すごくわかります。

木村:誰かにとって「この案件は木村綾子に相談してみよう。声をかけてみよう」と思ってもらえるような、そんな仕事ができていたらいいなと思います。

阿部:企画をする人は、「自分が何を好きなのか」「自分は何をしたいのか」ということに気付くと、自分のエンジンに気づくというか、前向きにかたちにしていけそうな気がします。

木村:そのためにも、敢えて向いていないことに取り組んでみたり、人に言われたことをやってみたりすることも必要ですね。

阿部:「企画メシ」の一期生の方から、「企画メシでは色々な企画に挑戦しないといけない。そうすることによって、結果的に自分がどんな企画をしたいのかが見えてきたんです」という言葉をいただきました。「企画メシ」は、自分の企画を浮き彫りにしていける。そういうところに気づいてくると、ひらめきは形にしていけるんですね。

木村:それに、自分でかたちにしなくても、ひらめきはあげてもいいと思うんです。「こんなおもしろいことひらめいちゃったけど、私にはできそうにないからあげるー!」って。信頼できる誰かに任せちゃう。


企画は実現できるともっと楽しい。

阿部:まさしく今の話に当てはまる企画が、「企画メシ」からかたちになりました。内沼晋太郎さんが講師を務めた『本屋の企画』の課題、「これから成り立つ『本屋×◯◯』を企画する」という課題から誕生したものです。モデレーターでありながら、僕も毎回課題を提出しているのですが、「本屋×BAR」なんじゃないかと思い、企画書を提出しました。内沼さんからは「ありだと思う」という言葉をいただき、僕も本が好きなのでこれは実現したいなと思ったんです。けれども、土地を借りて、お店を設計して、建てるというのはなかなかできない。その企画書をもとに出会えたのが、田中開くんだったんです。

木村:作家の田中小実昌さんのお孫さんです。

阿部:受講生の一人が、田中開くんと知り合いで、繋いでくれて。彼は、「お爺ちゃんが好きだったゴールデン街に土地を購入し、これからお店をつくる」というタイミングで、「こういうことを考えています」と話したら意気投合。その夢に乗っけてもらうことができて、その結果「The OPEN BOOK」というお店ができました。(詳しくはこちらで「夢を開く-THE OPEN BOOK-」)

木村:自分ができないことを誰かと一緒にできるというのは、とても嬉しいですよね。

阿部:僕はコピーライターなので、このお店がどのような思想のもとに存在しているのかという概念を言語化するというかたちで協力をしています。皆さん、ぜひお時間のある時によってみてください。レモンサワーが美味しいです。

阿部:そして「企画メシ」受講生発信の企画『Onigami』です。アソビシステムの中川悠介さんが講師を務めた『文化の企画』の課題「原宿でどんなイベントを開催すればよいか」という課題から誕生したものです。その時に「おにぎりで何かやりたい」という企画を出した方がいらっしゃって、他の受講生の中でも「おにぎりは何かできそうだ」と盛り上がりました。その結果、一般社団法人おにぎり協会の方々と一緒に組み、食べられないけどおいしいおにぎりというコンセプトで、おにぎりの折り紙を企画、開発しました。折り紙を折ると、おにぎりができる上に、おにぎりの豆知識がプリントされているので、おにぎりについて学べるというグッズです。


木村:これはまさに企画がちゃんとかたちになっていますね。


企画することで「何かと何か」がつながる。

阿部:それでは最後に、木村さんに「企画とはなにか?」を伺いたいです。

木村:企画とは、それがあることで、「何かと何かがつながる」「つながることで、自分がどうしようもなく変わってしまう」ものだと思います。俳句の世界に「二物衝撃」という言葉があります。まったく結びつかないであろう場所にあるものが、何かのきっかけでガチっと合わさることがあるんです。以前、「文学を語る会」に、うっかり「たにし好き」な人が来ちゃっても文学を好きになって帰ってもらえたら、というコンセプトでイベントをしたことがありました。もちろん、「たにし」というのは記号として用いたワードだったんですけどね。何をどういった切り口で話したら、本来なら届くはずのない相手に届くのか、2つがつながるかを考える。それが楽しかったんです。「人とモノ」「人と人」だったり、自分の中での「過去と未来」だったり、企画することで「何かと何か」がつながる。そしてそれは重大な事件である。企画って、そういうことだと思います。

阿部:木村さんのプロフィールには、「人と人、モノと人、場と人とを繋ぐ、“と”の役割を担う企画者でありたい」と書かれています。すごく素敵な考え方ですよね。

木村:そういうような役割でいられることが、本当に楽しいです。健やかでいられます。



<会場から質問をいただくことができました。一部をご紹介します。>

Q.「企画メシ」のワンアンドオンリーは何ですか?


阿部:多くの講座は当然ながら「先生と生徒」という関係になりますよね。でも企画メシは「先輩と後輩」のような関係になれる場なんだと思います。講師の方々も受講生から何かを学んでいこうと思ってくださっているし、受講生も講師に何かを持って帰ってもらおうと思っています。刺激の総量はとても大きいと思います。

木村:講師の座っている場所と、受講生の座っている場所に境目がない雰囲気です。

阿部:そうですね。距離も近いですし。そこが特別なところだと思っています。


Q.受講生は30歳前後とありましたが、40代でも参加希望してもよいですか?


阿部:もちろんです。30歳前後でなければいけないというわけではありません。昨年は学生の方もいらっしゃいました。大切なのは、年齢が上か下かという話ではなく、自分には無いものを持っている人を、先輩として接することができる。そして、そこからどんな関係をつくれるかなんだと思っています。




(第二部の様子は、4/12に更新します)
「企画でメシを食っていく2016」エントリーはこちらから。
ライター:高橋淳一 @juninho_taka