Kikakumeshi

企画でメシを食っていく

ニュース makikomi tsunagari tasukeai

2018.09.11

畑中雅美さんによる「編集の企画」レポート!


6/1(土)第4回目は【編集の企画】

今回のゲスト講師は、
『カノジョは嘘を愛しすぎてる』や『ぴんとこな』など、
これまで数多くのヒット作品を担当してきている、
小学館Cheese!編集長の畑中雅美さんをお迎えしました。


小さい頃に読んでいた本や漫画が原点。


人生で読んだ本のほとんどが、
10代の頃に読んだものだという畑中さん。


なんと共働きで忙しかったご両親の方針で、
小さい頃は近所の書店の本をツケ払いで、
自由に持って帰ることができたそう…!


しかし、本を無闇に増やすことを
許されていたわけではなく、


「買っていい本は一日一冊」
「持っていていい本は本棚に入るぶんだけ」


という畑中家の掟によって自然と、
本を「厳選する力」が鍛えられたそうです。



就職活動の際には、
仕事は長時間拘束されることだから、
自分の負荷になるものではなく、
長時間できることにしよう、
という方針を決めて会社選びをすることに。


子どもの頃からたくさんの本を読んでいた畑中さんにとって、
大量の文章を読んだり書いたりすることは
「負荷」とは感じないことでした。


出版社であれば無理なくパフォーマンスを発揮できると考え、小学館へ入社。


そして当時創刊されたばかりの月刊漫画雑誌Cheese!に配属され
編集者としての仕事がスタートします。


まず大事なのは「目利き」であること。


「例えば美容院で髪を切られるのに、新人じゃ不安ですよね。
作品は、作家にとって今後の人生を左右するようなもの。
それに対して新人の担当編集があれこれと言ったところで
作家は安心できないだろうな、と思ったんですよ。」


新入社員だった畑中さんが作家に信用してもらうため、まず目指したのは
アンケートの順位や部数を当てられる「目利き」になることでした。


例えば、売れる・売れない、1位をとれる・とれない、
アンケートをとったら7位くらいかな、など。


「編集者の目利きが正しくなければ、作品を直しても意味がない。」
「編集者の仕事は鏡になること。自分が正確な鏡でさえあれば、
作家は自分で判断ができる。」



「正しい目利きができないと仕事をしてもらえない」
という畑中さんの言葉から、様々な葛藤から答えを導き出し、
作家との信頼関係を育ててこられたのだと感じました。


現実から救うのが「エンターテインメント」。


漫画はなくても生きていける。
「なくてもいいもの」に
価値を生むにはどうすればいいだろう?


畑中さんがそんな問いから行き着いたのが、


「学校で泣いて帰ってきて、すっごく嫌な気持ちになっていたけど、
Cheese!の漫画を読んだらなんとなく楽しくなれる=現実から救ってくれる」


そういう物語をつくれる編集者になろう!という考えでした。
これが自分の中での、ひとつの方針になったといいます。



世の中のほとんどの人は、
現実を見ると投げ出したくなる。
だからこそ、“嘘の物語”という
「エンターテインメント」があることで、
現実から救われ、人は生きていける、と。


そして作家へのアドバイスは常に、
「売れる漫画」にすることを意識しているそうです。
その理由は、売れる漫画ほど、
たくさんの人に希望を与えることができるから。


数多くのヒット作を生み出す裏には、
現実を救ってくれる漫画をつくる、
という真っ直ぐな信念がありました。


終始和やかな雰囲気で笑いのたえない講義の中で、
発せられるパワーのある言葉の数々。


畑中さんの漫画に対する強い思いと、
編集者としての信条を
垣間見ることができた三時間でした。


講義の詳細はこちらの記事でも。
3作品連続で映画化――ヒットを裏で支えた、敏腕編集者の企画術



次回は、渡邉康太郎さんによる「コンテクストの企画」です。



ライター:皆川真麻
写真:加藤潤
Web協力:KNAP